障害のある人もない人も共に学び共に生きる社会を目指す小金井市条例の一部を改正する条例(案)について(概要)
更新日:2021年12月1日
市では、小金井市地域自立支援協議会に意見をいただきながら、障害のある人もない人も共に学び共に生きる社会を目指す小金井市条例(以下、「小金井市条例」と略します。)の見直しの検討を進めてきました。検討の結果を踏まえ、小金井市条例の一部を改正する条例(案)を作成いたしました。改正の概要は、以下のとおりです。
改正する理由について
今回、小金井市条例を改正する理由は主に二つあります。
小金井市条例は、平成30年6月29日に制定、同年10月1日から施行されていますが、それまでの経過として、平成27年5月に自立支援協議会において発議され、約2年半にわたる議論の後、平成30年2月に市議会へ上程、同年6月に議会で修正可決されています。その際、議論はまだまだ尽きないという状況でしたが、差別解消を推進するために、一刻も早く施行すべきという声もあり、東京都の条例との整合や、残された課題の検討も含め、施行後3年を目途に、施行状況や社会情勢の推移等を勘案して見直しを行うということを付則に規定して施行しました。
そして、令和3年10月1日に、その3年を迎えることとなるため、改正するというのが一つ目の理由です。
二つ目の理由は、障害者差別解消法の改正です。
小金井市条例は、権利条約や日本国憲法を拠りどころとし、障害者差別解消法の趣旨に則って制定、施行されていますが、その障害者差別解消法が今年5月に改正され、6月4日に公布されました。施行は公布の日から3年以内ということで、まだ施行はされていませんが、合理的な配慮の義務化など、現時点で整合をとるべきところは見直すこととしました。
改正する内容について
今回改正する内容は、障害者差別解消法の改正や東京都の条例との整合をとることや、小金井市条例の実効性を確保するための、必要最低限の見直しを行いました。
具体的には、第2条(定義)、第8条(不当な差別的取扱いの禁止)、第9条(合理的な配慮)、第10条(情報伝達)、第11条(相互理解の促進)、第18条(公表)、付則、の7つに関する条項です。
第2条(定義)の改正
1 第1号「障害者」の定義
「障害者手帳等の有無にかかわらず、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、高次脳機能障害、難治性疾患その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的、断続的又は周期的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。」と規定しました。
改正したポイントは、対象からとりこぼされてしまう人が出ないよう、解釈上含まれていたものを、条文の中に明文化したことです。
具体的には、「障害者手帳等の有無にかかわらず」、「高次脳機能障害」、「周期的」な症状の3つを明記したことです。
障害者差別解消法で対象としている「障害者」は障害者手帳の所持者に限定されるものではありません。それを明確にするため「障害者手帳等の有無にかかわらず」を追記しました。なお、小金井市条例では、障害者差別解消法では明示されていない、難治性疾患も明記しておりますが、難治性疾患の医療を受けていることを証する医療受給者証や医療券についても、障害者手帳同様、所持者に限定するものではありませんので、それらも含め障害者手帳「等」としています。
「高次脳機能障害」については、差別解消法の対象となる障害としては、「精神障害」に含まれるとされていますが、外見からはわかりにくく、見えない障害とも言われていることから、今回明記しました。
「周期的」に症状があらわれる状態とは、「断続的」に症状があらわれる状態に含まれるとも解釈できますが、「一定期間を置いて繰り返される」という症状の特性の違いを取り上げて、対象から外されてしまうことがないよう、追記することとしました。
2 第3号「不当な差別的取扱い」の定義
「障害又は障害に関連することを理由として行われるあらゆる区別、排除又は制限であって、あらゆる活動分野において、障害者が障害者でない者と等しく基本的人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果のあるものをいう。」と規定しました。
小金井市条例で定義している「差別」には、障害者に対して、障害者でない者と比べて不当な取扱いをし、又はしようとすること」と「合理的な配慮をしないこと」の二つの類型がありますが、現行の条例には、「合理的な配慮」だけが個別に規定されているので、同様に扱うため、新たに規定しました。
なお、「不当な取扱い」という表記については、障害者とそうでない者を区別した取扱いであっても、事実上の平等を促進するために必要なものや、障害者をそうでない者と比べて優遇するものは含まないことを明確にするため「差別的」を加え、「不当な差別的取扱い」としました。
また、差別には、障害を直接明示したものだけでなく、例えば、車椅子の利用を制限することにより、結果的に下肢に障害のある方に制限をしてしまうような「関連差別」や、外形的には中立なルール、例えば、マイカー通勤を禁止することなどによって、結果的に公共交通機関の利用が困難な人が勤務できなくなってしまうといった「関節差別」も含まれます。
そのため、「障害に関連することを理由として」ということと、「効果のあるもの」という文言を規定しています。
3 第5号「差別」の定義
「障害者に対し、障害者でない者の取扱いと比べて不当な差別的取扱いをし、又はしようとすること、及び合理的な配慮をしないことをいう。」と規定しました。
改正した点は、「不当な差別的取扱い」の定義を新設したことに伴い、文言の整理を行ったことです。
具体的には、「障害を理由として」という文言が重複してしまうため「障害者に対し」に修正し、「不当な取扱い」を第3号との整合をとり「不当な差別的取扱い」としました。
第8条(不当な差別的取扱いの禁止)の新設
「何人も、障害者及びその家族に対し、不当な差別的取扱いをしてはならない。」という規定を新設しました。
「不当な差別的取扱い」の定義を新設したことと同様の理由で、「差別」の類型の一つである「不当な差別的取扱いの禁止」について、個別に規定したものです。
現行条例の第6条に、「差別の禁止」についての規定があり、重複するという議論もありましたが、これは理念的な規定であり、今回新設した第8条の規定は具体的な規定と整理しています。
なお、障害者だけでなく、その家族も不当な取扱いを受けることがあるため、家族に対する不当な差別的取扱いも禁止しています。
第9条(合理的な配慮)の改正
1 第1項の改正
「市及び事業者は、その事務又は事業を行うに当たり、次に掲げる場合には、第6条第2項の規定の趣旨を踏まえ、当該障害者の性別、年齢、障害の状態等に応じて、社会的障壁の除去の実施について合理的な配慮をしなければならない。」と規定しました。
改正した点の一つ目は、主語を「市」から「市及び事業者」に改めることで、これまで「市」のみ義務としていた合理的な配慮の提供義務を事業者にも課し、差別解消法の改正及び都条例との整合をとったことです。
二つ目の改正点は、合理的な配慮の提供は、障害者の求めに応じるだけではなく、当該障害者の個別の状況にも応じて提供される必要があることから、「当該障害者の性別、年齢、障害の状態等に応じて」という文言を追記したことです。
三つ目の改正点として、「次に掲げる場合」に該当する場面を3つ追加しました。
第10号「医療又はリハビリテーションを提供するとき。」、第11号「選挙等を行うとき。」、第12号「労働者の募集、採用及び労働条件を決定するとき。」と規定しています。
第10号「医療又はリハビリテーションを提供するとき。」については、障害のある人が、生き生きと安心して生活を送ることができるよう、適切な支援が求められることから例示したものです。
医療やリハビリテーションの提供を受けることは、障害のある人が日常生活等を営む上で重要なことであり、医療やリハビリテーションにより障害の軽減を図ることは、自立した生活や社会参加を促進するために不可欠なものです。
第11号「選挙等を行うとき。」については、障害のある人が、円滑に投票できるよう、障害の特性や状況等に応じた配慮が大切なことから例示したものです。
参政権の一つである選挙権は、自身の意思で選んだ代表者を通じて、政治に参加するという重要な権利です。
権利条約では、障害者が、政治的及び公的活動に効果的かつ完全に参加することができることを確保することが求められています。
第12号「労働者の募集、採用及び労働条件を決定するとき。」については、障害のある人が、自立した地域生活を送るためには、障害のない人と同様に、雇用の機会が確保されることが必要なことから例示したものです。
なお、現行条例第10号では、とりこぼしがないよう、「その他社会的障壁が生じているとき。」と規定しており、この規定は第13号に繰り下げて残しています。
それにも関わらず、今回追加したのは、複数の自治体で例示しているものや、制定時の市議会による付帯決議を踏まえたものです。
2 第2項の改正
「市民は、前項各号に掲げる場合には、第6条第2項の規定の趣旨を踏まえ、当該障害者の性別、年齢、障害の状態等に応じて、社会的障壁の除去の実施について合理的な配慮をするように努めなければならない。」と規定しました。
改正の内容は、事業者による合理的な配慮の提供を義務化したことに伴い、主語を「市民及び事業者」から「市民」に修正したことと、第1項と同様に、個別の状況に応じた適切な配慮が必要なことを追記したことです。
法改正と都条例との整合により、事業者による合理的な配慮の提供は義務化しましたが、市民による合理的な配慮の提供については、努力義務のままとしています。
3 第3項の新設
「市は、市民及び事業者が合理的な配慮を容易に行うことができるよう、必要な支援措置を講ずるものとする。」と規定しました。
事業者による合理的な配慮の提供を義務化したことから、事業者等が容易に合理的な配慮を提供することができるよう、必要な支援を行うものです。
このことにより、差別の解消を推進することを目的としています。支援の内容としては、事例の紹介などの情報提供や、財政負担を軽減する措置などを行います。
第10条(情報伝達)の改正
「市は、手話が独自の文法体系を持つ言語であるという認識の下、手話が言語であることの理解を促進するとともに、障害者が自ら選択するコミュニケーション手段(字幕、手話通訳、要約筆記、音声解説等をいう。以下同じ。)を利用できるよう、コミュニケーション手段の普及啓発及び利用拡大の支援に努めるものとする。」と規定しました。
改正の内容は、手話が「言語」であることの理解を促進することについて追記したことです。
手話は、手や指の動き、表情を使い視覚的に表現するもので、独自の文法体系をもつ、音声言語と対等な言語です。日本語に手話単語をあわせて使う人もいます。
手話を第一言語として生活している人、手話を獲得・習得しようとしている聞こえない人や聞こえにくい人、手話を使う聞こえる人など、それぞれの人が使う手話は様々ですが、それらすべてが手話であり、一つの言語であることの理解が求められています。
権利条約や障害者基本法においても、手話は「言語」として位置付けられています。また、東京都の条例においては、言語としての手話の普及について規定しています。今回の改正では、これらのことを踏まえ、手話が、音声言語である日本語とは異なる独自の文法体系を持つ言語であるという認識に基づき、それに対する理解を促進することを明記しました。
第11条(相互理解の促進)の改正
新たに、第2項として、「市長及び教育委員会は、児童及び生徒が障害及び障害者に対する理解を深めるための教育の重要性を認識し、その実施について相互に連携を図るものとする。」と規定しました。
改正点は、障害と障害者に対する理解を深める教育の実施について、市長と教育委員会が相互に連携を図ることを新たに明記したことです。
共生社会の実現には、学齢期における、障害と障害者に対する理解を深めるための教育がとても重要であり、その実施には、市長部局と教育委員会の関係各課による連携が必要なことを規定したものです。
現行条例の第11条で、教育に関する規定を設けていますが、そこで規定する教育に関する施策についても、必要に応じて、相互に連携を図ることを含めています。
第18条(公表)の新設
第1項に、「市長は、前条の規定による勧告を受けた者が、正当な理由なく当該勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。」と規定し、第2項に、「市長は、前項の規定による公表をしようとするときは、あらかじめ当該勧告を受けた者に対し、その旨を通知するとともに、意見を述べる機会を与えなければならない。」と規定しました。
現行条例の第16条に、差別にあたると思われる事案を解決するため、関係者に対して行なった助言又はあっせんに従わない者に対し、改善するよう勧告できるという規定があります。
改善の勧告とは、その助言又はあっせんに従うよう、市長の権限で働きかけることを言いますが、法的な強制力はありません。
第1項は、差別を行なったと認められる者が、正当な理由なく勧告にも従わなかった場合に、その内容を公表できることを規定したものです。
公表の趣旨は、差別の解消を目的とした情報提供で、制裁的な意図をもって行うものではありません。
第2項は、公表を行う場合には、事前に相手方に通知し、意見を聴く機会を設けることを規定したものです。
差別を行なったという内容を公表することは、その者に不利益を与えてしまう可能性もあることから、慎重を期す必要があるからです。
付則
1 付則第1項
施行期日についての規定です。
「この条例は、令和4年4月1日から施行する。」と規定しています。今後のスケジュールとしては、10月1日から1ヶ月間パブリックコメントを実施し、その結果を踏まえ、小金井市地域自立支援協議会で再度協議した上で、最終的な条例案を令和4年3月に開催される市議会に上程します。順調に進めば、3月の議会で決定することになるので、現時点では、令和4年4月1日から施行することを想定しています。
2 付則第2項
検討についての規定です。
「市長は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律(令和3年法律第56号)の施行後3年を目途として、この条例による改正後の障害のある人もない人も共に学び共に生きる社会を目指す小金井市条例(以下「条例」という。)の施行の状況、社会情勢の推移等を勘案し、必要があると認めるときは、条例の規定について検討を加え、その結果について必要な措置を講ずるものとする。」と規定しています。
今回の改正は、この条例の実効性の確保と、都条例や法改正との整合をはかることを目的とする、必要最低限の見直しにとどまっており、今回の改正で見直すことができなかった課題については、引き続き検討を行います。
改正法は令和3年6月4日に公布されましたが、公布の日から3年以内に施行するとされており、改正法の施行後あらためて見直すべきことが、今後明らかになってくると思われることから、次の見直しの時期は。改正法施行後3年を目途としています。
お問合わせ
自立生活支援課障害福祉係
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